レーザー脱毛を受ける前に
2001年08月01日
医療機関で行ったレーザー脱毛の途中契約
国民生活センター発行「国民生活」6月号より
医療用の機器を使用したレーザー脱毛サービス(以下、医療レーザー脱毛と呼ぶ)は、2000年11月に厚生省から「医師しか行えない医療行為」とする通知が都道府県や日本医師会あてに出されており、医師免許を所持した者以外が施術を行った場合、医師法違反に問われることになった。これにより医療機関以外のいわゆるエステティックサロンにおいて、医療レーザー脱毛は行えないことになるが、エステティックサロンが医療機関と密接な関係を持ち、医療レーザー脱毛の勧誘を行っていると思われる事例を紹介する。
◆相談内容(20歳/女性/会社員)
友人から一緒に行ってみないかと誘われ、Aエステティックサロンに出向き、無料体験エステを受けた。そのとき勧誘を受け、Aエステティックサロンの会員契約を結び、脱毛エステを受けることにした。担当のエステティシャンが「Aエステティックサロンで脱毛を行うと、完全に脱毛するまでに1000万円くらいのお金がかかるけれど、Bクリニックで契約すれば安くすむから」というので、そのエステティシャンに連れられてBクリニックに行き、1年間フリーパスで何度でも施術が受けられるレーザー脱毛を67万円で契約した。施術を1回受けた時点で肌に違和感を感じたため、これ以上施術を受けたくないと思いBクリニックに解約を申し出たところ、「当社は医療機関であり、解約するのであれば初回分の診療費として、37万円を請求する」といわれた。1年間フリーパスで67万円の契約なのに、1回の施術でこのような高額の請求はおかしいのではないか。
◆国民生活センターの処理概要
申し立てを受け、当センターからAエステティックサロンとBクリニックの各々に状況説明を求めた。・Aエステティックサロンの説明
「AエステティックサロンとBクリニックは経営的に全く別の会社であり、Bクリニックで行われた契約については全く関知していない。医療レーザー脱毛は医師免許を持った者しかできないので、医療機関であるBクリニックを便宜上紹介しただけである。そのとき担当したエステティシャンはすでに退職しており、どのような勧誘を行ったかは定かではない。Bクリニックでの契約や営業状況は把握していない。」
・Bクリニックの説明
「Bクリニックは医療機関であり、医療レーザー脱毛を行っている。当方で取り扱うレーザー脱毛は、初回の診療で毛根のほとんどを焼き切るので、2回目以降は補助的な施術を行うのみである。今回の契約は1年間のフリーパス契約となっているが、契約金額の67万円のうち、37万円が初回の診療代金に相当し、残りの30万円が1年分の補助的な施術の費用に相当する。」
確かに相談者が持参した契約書には、脱毛の契約先はBクリニックと記載されており、Aエステティックサロンの関与は表面上見受けられなかった。しかし、相談者からの申し立てによれば、このBクリニックの診療所はAエステティックサロン本社ビルの2階に所在し、頻繁にA エステティックサロン雇用のエステティシャンがBクリニックへ行き来しており、何らかの業務的な提携関係があるのではないかと思われる。
この両者の申し立てを相談者に確認したところ、
「契約書の作成はAエステティックサロン雇用のエステティシャンが行っており、BクリニックとAエステティックサロンに全くつながりがないということは考えられない。またBクリニックの医療料金体系の説明は契約時に行われなかったので、通常のエステ契約を行ったと思っていた。」と返答があった。
当事者の申し立てを整理すると、
1. Aエステティックサロンのエステティシャンが「Aエステティックサロンでは費用が1000万円もかかるから、Bクリニックで脱毛したほうがよい」と誇大な表現で相談者を勧誘し、Bクリニックで契約を結ばせている。
2. Bクリニックでの契約の際「契約内容は通常のエステと異なる医療行為であり、料金は初回費用が37万円で、2回目以降の補助的な施術1年分の費用が30万円である」などの重要事項の説明が行われていなかった。
という2つの問題点が明らかであり、当センターから事業者側に解約料金の見直しを行うよう指導した。その後Bクリニックから、契約時に消費者への説明が不足していたことを認め、当初の請求額の25%引きにするとの提示があったが、相談者側がこの金額を了承しなかった。これを受け、当センターからAエステティックサロンに対し、問題解決への積極的な働きかけをBクリニックに行うよう指導したところ、後日Bクリニックから当初の請求額の50%引きの提示があり、相談者もこれを了承し解決となった。
◆問題点
この事例では医療レーザー脱毛の勧誘をエステティックサロンが行い、料金体系やサービス内容の詳しい説明を行っていなかったために、消費者に通常の脱毛エステの契約をしたような誤解を生じさせることとなってしまった。今後のトラブル防止のために、当センターよりAエステティックサロンに対し、契約の方法・内容についての改善の要望を行ったところ、「初回に偏った料金配分の見直しと消費者への詳しい料金説明を義務づけることをBクリニックに徹底する」と返答があった。
医療レーザー脱毛は、通常のエステティックサービスと異なり、特定商取引に関する法律(旧訪問販売等に関する法律)に定める特定継続的役務としての規制を受けないため、今後、中途解約をめぐるトラブルの増加が懸念される。